7年前の3月11日、日本は東北地方を中心にした東日本で大地震が起こりました。未曽有の被害が発生し、ライフラインは壊滅状態に陥りました。とにかく1秒でも早いライフラインの復旧が急がれましたが、とりわけ重要なのは水と電気だと言えます。今回は、電気はどのようにして発電されているかを、環境汚染と絡めて簡単に書きたいと思います。
1. 水力発電
水の力を利用してタービンを回して発電させるものです。その多くは河川水を堰き止めてダムを作り、流水量をコントロールしています。三峡ダムや黒部川第4発電所(通称クロヨン)は有名です。日本では新規の水力発電計画は皆無です。
水力発電は河川の自然形態に少なからず影響を及ぼします。また水量(降雨量)の増減によって発電量が変動します。
大規模な水力発電は別として、農業用水路などへの小規模水力発電は、導入設置が容易であることから、普及は増加するものと思われます。
2. 火力発電
石油、石炭、天然ガス(LNG)などの燃焼で水を沸騰させ、発生した蒸気でタービンを回して発電させます。燃料を燃焼させる際に発生するCO2などの温室効果ガスは大気汚染の原因になります。
燃焼効率を高めるための技術改良が進んでいて、その結果相対的に排気ガスが減少しています。特に石炭火力発電は石油やLNGに比べて燃料価格が安定していることから見直されつつあり、最近では石炭ガス化複合発電システム(IGCC)が、実証から実用化へと進んでいます。従来の燃焼効率が更に高められるため、排気ガス低減化にもつながっています。
3. 原子力発電
核分裂反応エネルギーで蒸気を発生させるもので、蒸気によってタービンを回す部分は火力発電と同様です。事故は絶対にあってはならないので、計画・建設から運転に至る全ての分野にわたって極めて高い安全性が要求されます。軽微な事故も含めて、運転情報は一般に公開されています。
使用済み燃料をどうするかは最重要課題のひとつです。
以上が皆さんもよくご存知の従来型発電です。それぞれ一長一短があります。火力発電では、消費した燃料を再生させるためには非常に長い年月がかかり、再生させるための年月より使用する量の方が大きければ、地球資源はそう遠くない将来に枯渇を迎えてしまいます。しかも排気ガスによる地球温暖化が急速に進んでおり、早急な対策が必要とされます。
この点を解決するため昨今、発電コストではなく、環境汚染防止という観点から再生可能エネルギーによる発電が大きな注目を集めております。なお、先に述べた水力発電は、再生可能エネルギーによる発電と言えます。次に再生可能エネルギー発電をいくつか見てみましょう。
4. 風力発電
陽澄湖の北岸あたりを車で走っていると、風力発電の風車がズラリと並んでいるのを目にすることができます。風が吹きやすい場所なのでしょう。近くで見ると巨大な風車に圧倒されます。
風車が回る時に低周波音や機械音が発生するので、民家の近くには適しません。当然ですが風が吹かなければ発電できないので、発電量は天候に左右されます。しかし風力を利用しているので排気などの環境汚染問題は起こりません。
5. バイオマス発電
生ゴミ・可燃ゴミ・木屑・汚泥(排水処理で発生)・家畜糞尿などを燃料として蒸気を発生させる発電方式です。地球資源を燃料としていないので再生可能エネルギーと言えます。燃焼ガスが発生しますが、燃焼時に発生するCO2と吸収させるCO2を同量にする(カーボンニュートラル)ことで排気問題も軽減可能とされています。
6. バイナリー発電
水より沸点が低い媒体(水とアンモニアの混合物等)と熱交換し、この媒体の蒸気でタービンを回す発電方法です。低温の蒸気や熱水を発電に利用でき、地熱や温泉熱、工場廃熱の有効活用として期待されています。温泉を利用したバイナリー発電は再生可能エネルギーに指定されています。
7. 太陽光発電
今まで述べてきた発電は全て、落下水や蒸気など何らかの力で発電機を回すものです。太陽光発電は、発電機を回すのではなく、太陽電池を使って光エネルギーから直接直流電気を得る点が他とは全く異なります。太陽光パネル設置によって環境に影響を及ぼすことはなく、非常にクリーンな発電と言えます。しかし十分な電力を確保するためには広大な面積が必要になることや、寿命に達した太陽光パネル処分時の環境汚染対策が必要です。
今後電気自動車(EV)の普及が進み、電力需要は更に増大します。ガソリンや軽油自動車の排気ガスを減少させる目的と同時に、発電による排気ガス減少も実践されるでしょう。
しかし環境対策が進んだ発電だからと言って、省電力が不要というわけではありません。電力を使用する会社、個人一人一人が意識的に省電力を実践すれば、国全体では大きな効果を得ることが可能になります。この点は電力消費者の一人として肝に銘じなければならないと思います。