環境保護 日本の忘れられない記憶

昨今の中国における環境規制が急速であるのは皆さんも気付いていらっしゃることと思います。規制強化に実態が付いて行けるのかなと心配しますが、逆に言えばそれ程この中国の環境対策が急務になってきているということだと思います。

偉そうなことを言いますが、かつての日本も同じでした。「環境」という言葉が普及していなかった頃は、「公害」という言葉で語られており、公害問題の最たるものは「水俣病」でしょう。熊本県水俣市にある化学工場の排水中に猛毒である有機水銀が含まれており、水俣湾の魚介類に蓄積され、それを食した地元の人々に深刻な中枢神経障害を引き起こした事件です。これは1950年代から既に症状が確認され、当初は原因不明の奇病として扱われていましたが、企業排水が原因ではないかと調査が進んだものの、対策が採られなかったことで、多くの被害者を生み出してしまった不幸な事件です。

公害発生当時、法的な規制は施行されていなかったため、被害者は企業を相手取って損害賠償訴訟(民事裁判)を起こしましたが、国や県は60年頃には原因と被害の相関が認識できたはずだとして、不作為違法責任を追及されました。つまり、企業だけでなく、行政の責任も問われたわけです。一方刑事裁判では、企業経営者は業務上過失致死罪で有罪が確定しています。

水俣病以外に、第二水俣病(新潟県)、イタイイタイ病(富山県)、四日市喘息(三重県)を合わせて、四大公害事件と呼ばれます。四日市喘息は大気汚染、他の3つは工場排水による水汚染です。いずれも日本が高度経済成長していた60年代に事件化したものです。

このような公害問題を日本は経験して、67年に公害対策基本法、71年に、総務省、厚生省、通産省などの関連部署が統合されて環境庁が発足し、2001年には環境省に格上げされて現在に至っています。

法律や監督官庁が整備されたのと同時に、公害対策を行っていない企業は反社会的だとして、一般市民から追及されましたが、企業側も公害対策は事業の使命と位置づけ、積極的な対策が採られたことで、今の日本の環境は世界的に称賛を受けるほどに至っています。環境対策を採らない企業は経済活動すべきではないという考えは、いまや日本だけでなく世界の常識です。

ここ中国でもそういった機運が急激に進んでいることは、国内だけではなく、国際的な観点から必要なことでしょう。環境対策技術は、日本は世界的に見ても非常にレベルが高いと言われていますが、それは前述した辛い歴史の結果です。産業の発展はとても大切ですが、経済活動によって環境を汚しては元も子もないのです。

 

最近の無錫の大気はとても良くなってきていると実感します。これを書いている現在、無錫の空気は澄んでいるなと思いましたがPM2.5濃度は153、小生の地元である名古屋は13。10倍以上の開きがあります。大気汚染規制強化が進んで、更に良くなるでしょう。

大気が良くなってきているのを実感するのは夜です。この時期の夜、南天には冬の大三角形を見ることができます。

左上の星は小犬座のプロキオン、右上の赤い星はオリオン座のベテルギウス、下は大犬座のシリウス、この3つの一等星から成る三角形は、悪天でない限り見えなければならないはずです。小学生の頃は、この星を見て宇宙への憧れを抱いたものです。この三つの星座のうち、オリオン座は特に有名ですね。

 

 

 

オリオン座には、四角形の内側の中央部に並んだ三ツ星と、その下方に小三ツ星が並んでいます。小三ツ星のひとつはオリオン座大星雲です。ここまではっきり見えるようになれば文句なしです。

最後に余談ですが、オリオン座のベテルギウス(左上の赤い星)は、恒星として末期を迎えていて、今にも超新星爆発を起こすと言われています。超新星爆発を起こすと、ニュートリノが大量に放出され、スーパーカミオカンデで観測されます。壮大な天体ショーが見られる夜空であって欲しいとつくづく思います。