18世紀にイギリスで始まった産業革命により、人類の生活はそれ以前と比べて、文字通り革命的に変革しました。様々な工業が生まれ、大量生産により人類の生活はとても便利になりました。
しかし一方では、それらの原料や動力として石油、石炭、ガスなどを始めとする地球資源が大量に使われ、海・河川や大気、土壌などの自然界に廃棄されたことによって、明確に環境汚染が始まったと言えます。人類がそれに気づいた今、地球環境の更なる汚染を食い止め、以前の姿に戻す努力を行わなければ、地球の未来を間違いなく短くしてしまうでしょう。
企業はなぜ環境対策を行わなければならないのか。企業の経済活動によって付加価値が生み出されますが、だからと言って地球を汚染させることはあってはならないのです。規制が厳しいからではなく、地球環境を未来に残すための努力と実践を行わない企業の存在を問われていると言っても過言ではないと思います。法令遵守は目的ではなく、あくまでも手段です。
環境汚染対策は、一言でいえば、企業の生産活動によって生み出される廃棄物を減らして無害化することです。
直接的な面では、工場排水、排ガス、廃棄物などは、生産活動によってどうしても発生しますが、それを減量化して無害化する必要があります。
間接的な面では、工場や事業所の機械・電機設備を動かすための動力を減らすことも重要です。省エネです。機械設備の効率改善や照明器具をLED化することなどいろいろあります。こうすることによって、CO2排出量を削減でき、地球温暖化防止につながります。当然ですが、企業のコスト削減にもつながります。日本の電力供給会社は、1kWあたりの発電によるCO2排出量を公表しています。
そしてもう一つ、生産物によって2次的な汚染を発生させないことも必要です。例えば、リサイクルが可能な素材で生産することです。材料だけではなく、容器や梱包資材も例外ではありません。中国では2020年までに宅配用梱包資材にエコ資材を導入し、回収システムを構築するというニュースを読みました。過剰梱包から脱却することと同時に、運送業者の荷扱いを丁寧にすれば、更に梱包を軽くすることができると思います。
生産活動による環境汚染を防止するための環境対策技術は、歴史的には汚染の実体を追いかけるところから始まっています。しかし環境対策技術もいろいろと新しい技術が開発されております。環境汚染を引き起こす前に結果を予測して対策を検討実施することが求められています。
昨今の環境規制の中で、とりわけ厳しいVOC排気ガスの処理方法について簡単に紹介しましょう。
塗装排気などは、VOC濃度が低いため、そのままは燃焼させることができません。濃度を高めるために、回転式濃縮機を通します。濃縮器はフィルターでもあるので、そこを通過した排気は、VOCの90%以上が吸着され、大気中に放出します。
濃縮機に吸着されたVOCは高濃度の状態です。それを後段の燃焼室の熱を利用して噴出させ、燃焼室に送ります。高濃度状態のVOCは、それ自体が発熱して酸化され、無害化されて外気に放出されます。燃焼室では補助的にバーナーを使いますが、高濃度VOCの自己熱を蓄熱して再利用するシステムのため、ランニングコストは非常に安価で燃焼運転させることが可能です。
このような複合的な環境対策を実践することは、一面的には確かにコストがかかります。しかし、環境対策にコストをかけない企業は、反社会的な存在として、経済活動が許されてはならないのです。経済活動が続けられないリスクと、環境保護のためにかけるコスト、どちらがメリットあるか、言うまでもありません。
環境保護を実践するためのツールとして、ISO14001があります。ISO14001は製造業だけでなく、サービス業などあらゆる業種も取得可能で、日本では数多くの企業、団体、自治体などがISO14001の認証を取得しています。
ISO14001は、環境影響負荷を軽減させるための行動目標を定め、それを実践し、結果を評価し、対策を行う、つまりPDCAの思想によって推進されます。
数値目標が達成できないからと言って認証が取り消されることはありません。目標が達成できなかった場合は、その要因を分析し、そして対策を行う、このサイクルをエンドレスで続けることが求められています。
弊社の日本は、本社、支店・営業所すべてでISO14001の認証を取得しています。目標管理は、電力使用量、ガソリン、紙使用量などの削減、裏紙や再生紙の利用、産業廃棄物のマニュフェスト管理など一般的なものですが、ユニークなものとして、省エネなど環境配慮商品の拡販も目標管理しております。重要な点は、社長をはじめとした全社員の意識で行われていることです。こうすることで社員の名刺やカタログにISO14001の認証マークを入れることが許可されています。いまやこれが当たり前になっています。ただ気を付けなければならないのは、ISO14001の認証維持のために「やらされる」という風潮がややもすると芽生えてしまうことです。
環境対策は、まずは個人の意識改革から出発しなければなりません。その積み重ねが、会社全体、地域全体、国全体へと大きな効果を生む原動力だと思います。