UVのお話し

超純水、純水設備にUVが使われていることは前々回、前回のお話の中で紹介しました。UVとは紫外線のことです。紫外線は英語ではUltra Violetと書くので、それを略してUVと言います。サングラスなどのUVカットやUV対策化粧品などのおかげでUVという言葉もかなり普及しました。

UVは波長で言うと、400nm(ナノメーター)より短い波長域の光です。可視光はだいたい400~800nmですからUVは可視できない波長域です。可視できる最短波長の色は紫で、それよりも短波長なので紫の外、つまり紫外線と呼ぶようになりました。因みにUVよりもっと短波長になると、放射線の領域になります。

さてUVには可視光では得られにくい様々な効果があります。例えばUV硬化塗料は、特殊な塗料にUV照射することによって極めてハードな塗装を形成します。これに使われるUVは360nm程度の波長です。一般的にはUV-Aと呼びます。更に短波長になるとUV-B、UV-Cの領域になります。UV-Cの代表的な働きは殺菌です。

殺菌とはどういうことか、簡単に言えば微生物の細胞を破壊して細胞分裂できなくすることです。詳しく言うと細胞中のDNAにUVが照射されることにより、DNAが破壊され、DNAは遺伝子ですから、微生物は分裂できなくなるということです。いろいろな研究の結果、DNAに最も吸収されやすい波長が260nm付近であることが分かりました。言い換えれば最も殺菌効果が高い波長ということです。更に言い換えれば、この波長は人体にとっても有害で、非可視光のUVを直視すると、網膜が損傷するので危険です。微生物だろうと人体だろうと、細胞レベルでは同じものですから当然ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

260nm付近の波長を簡単に発光できるものは何か、それは水銀放電灯なのです。真空の管内に微量の水銀を封入して両端から放電させると、水銀は電子の衝突を受けて固有の波長で振動します。厳密には封入する水銀の量(圧力)にもよりますが、振動周波数は253.7nmで、ほぼ260nmということになり、殺菌できる波長を容易に生み出すことができることになります。

水銀灯、実は身の回りに普及していますがお分かりですね、そう蛍光灯です。蛍光灯の内部では水銀が253.7nmを発光しているのです。しかしこのまま外部に光を出すと危険なので、UVを透過しない材質としてソーダガラスを使用し、なおかつ光の拡散効果を高めるため、蛍光塗料が塗布されています。構造的にはUVランプも蛍光灯も同じです。UV殺菌器に搭載されるUVランプは、UVを透過させる必要があるので、石英ガラスが使われます。石英ガラスも一般の透明ガラスも無色透明で外見的には同じです。

UV-Cは太陽光にも含まれています。しかし地球の成層圏にあるオゾン層によって地表への照射が遮られているのです。南極でオゾン層に穴が開いた状態のオゾンホールが観測されているという報道を耳にしますが、地表にUV-Cが照射されることは人間のみならず、地球生物にとって極めて危険ですので、オゾン層の破壊を食い止めなくてはなりません。オゾン層の破壊は、かつて冷媒などに使われたフロンなどによって引き起こされたと言えます。文明・技術の発達で生活は便利に豊かになりますが、地球環境は徐々に悪化しています。

環境破壊を分かり易く説明すると次のようになります。新幹線の自由席に座るためホームで並んで待っているとします。自分は先頭から10人目位だから座ることはできます。しかし50人目の人は微妙な感じでしょう。そこに自分より前に並んでいた人の知り合いが3人くらい割り込んできたとします。10番目の自分には影響ないと考えて文句を言わないでものすが、50番目の人は絶望的になります。環境破壊とは、すぐには大した影響はないものの、後になると取り返しがつかないことになり兼ねないものなのです。